異文化の理解を通じて他者への理解を深める

 

 「共感」へのアプローチ

文化人類学への第一歩〜

f:id:happyfine:20200522222245j:plain

 

著者:渥美一弥

 

Short summary

 文化人類学という言葉をあなたは聞いたことがありますか?異文化を比較して考え、その「異なり方」を理解していこうとする学問です。文化人類学は自分のものの見方を変えてくれます。本当は難しい内容を、事例を通じてわかりやすく紹介しいるので初心者でも文化人類学の基本を学ぶことができます。相手の気持ちが理解できないと思うことがよくある、そんな人には是非読んで欲しい1冊です。

 

 

Review

 もともと学生時代から文化人類学を学んでおり、興味はありました。著者の授業にも参加していて非常に面白く興味深い分野だなと思っていました。社会人になって患者さんとと話して、意見が違ったり自分の思った反応と違ったりすると「他人」だから仕方ないな。と思うだけで自分を納得させていました。

 しかしそれでは、思考が停止してしまう。つまりそれは自文化中心主義の考え方だったのです。さらに深く追求しなければ、相手への理解を深めることはできません。“ある「文化」は他の「文化」と比較することによって初めて理解が可能になる。それ故に文化人類学者は自分の育った「文化」から離れて異文化に深く入り込み、その中で生活する経験を持たなければならない。”と文中にありました。なかなかそういった機会はありませんが「相手」と「自分」を比較し、違いを考えそこに疑問を持つことが初めの一歩なんだと思いました。

 だからこそ、自分と意見が違ったり、変だなと思ったり、価値観が違うなと思ったりする相手に対しては「なぜ」そう思うのかを深く掘り下げようおと思います。そうすることで相手という「異文化」の理解に繋がって行くはずです。疑問を持ち、そのルーツを探ることで相手に歩み寄ることができ本質的な「共感」ができるのだと考えました。

 

 

 僕は総合診療専門医を目指しており、その中に「患者中心の医療」という方法論があります。その方法の最初の一歩は病気を「疾患」と「病い」に分けることです。僕たち医者は「疾患」の方に重点を当てがちですが、「病い」にも目を向けることが必要と言われます。文化人類学はこの「病い」により重点をおいていました。(医師で人類学者のアーサー・クライマンが病気をこの2つに分類したようです。)そのため、総合診療の分野では文化人類学的な視点も非常に重要ではないかと思っています。

 文化人類学×総合診療は面白い取り組みだと思うので、個人的にはもっと文化人類学を学んでいこうと思います。