医療者の私達こそ行動経済学的なバイアスを自覚するべき

 

医療現場の行動経済学

〜すれ違う医者と患者〜

f:id:happyfine:20200912211015j:plain

 

著者:大竹文雄・平井啓

 

Short summary

 医療に携わっていて患者さんとのコミュニケーションでうまく意思疎通できないことがあります。なんでこの人はこんな選択をするのか?本当に自分が言いたいことが伝わっているのか?そんなあるあるがなぜ起きるのか。行動経済学的な視点で説明してくれる本です。患者さんとのコミュニケーションの中にモヤモヤがある人は読んでみて下さい。

 

 

Review

 ガン末期の患者への病状説明や各種同意書を取る中で「本当にこの患者さんや家族さんたちはきちんと理解しているのか?」と思うことがよくあります。どのくらいの確率でどんなことが起きて…合併症の確率はどのくらいで…など正直自分でもイメージがつきにくいこともしばしば経験します。そんなモヤモヤにこの行動経済学の理論は答えを導いてくれるような気がしました。

 人が行動を選択する時には様々なバイアスが関係していることがよくわかった。特に医療現場では損失回避や現在バイアス、利用可能ヒューステリックなどが関与しているということがよくわかった。各々の詳細についてはみなさんもぜひこの本を読んでみて下さい。バイアスの詳細を理解するたびに「自分もこんな事あるなぁ」これもバイアスだったのか。。。と痛感します。

 まずは自分もバイアスによって行動を選択させられているということをよくわかっておこうと思いました。また、患者に行動を選択させたいときは損失回避を積極的に使って見ようと思います。「この薬の副作用は5%で〇〇みたいな副作用があります。」というよりも「この薬を使うと95%の人は特に副作用はなく使用できます。」といった言い方のほうが薬を飲む選択をさせやすいというものです。この説明の仕方をちょっとでもできるといいなと思います。

 

 自分が勉強してる文化人類学にちょっと似ているなぁと思いましたが、バイアスの考え方などは文化人類学にはない視点だなと思いました。相手や自分の行動を変化させるための学問といった印象です。自分にはなかった新しい視点だったのですごく面白く読めました!