ACPや意思決定支援が上手く行かない。そんなあなたにおすすめです!

正解を目指さない!?意思決定⇔支援

〜人生最終段階の話し合い〜 

著者:阿部泰之

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Short summary

 医療従事者であればACP(アドバンス・ケア・プランニング)という言葉は最近良く聞く思います。具体的に何をすればよいかわかりますか?そんな疑問にこの本はピッタリです。大事なのは話し合いをするプロセスで、お互いの価値観を伝え、納得感を得ること。「良かった」と思える話し合いはそうやって作られます。意思決定支援にかんしてモヤモヤがある医療者におすすめの1冊です。

 

Review

 意思決定支援に関しては、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という言葉は知っていました。しかし、具体的に何をどう進めていったらよいかわからず不安でした。また、話し合いをする前から方針が決まっている。その方針に向けた話し合いをしていました。自分自身も「これでいいのかなぁ?」と自問自答しながらカンファレンスと言う名の誘導尋問をしていることが多かったです。

 意思決定とその話し合いの正解は、“内的体験としての「これで正解だった」という確信を作り出す営み”であるという一文で、自分の意思決定についてのビジョンが開けました。意思決定やカンファレンスに正解はありません。この本にも“結果は後から解釈されるもの”とありました。つまり、その話し合いの結末ではなく内容が、その中でも「納得感」これが重要であると気付かされました。このおかげで自分の中にあったもやもやが少し晴れたような気がしました。

 そこで、自分はこれから意思決定やその話し合いで次の3つのことを実践していこうと思います。まず1つ目は医学的な意思決定が必要な場面では「決定を保留する」「決めないでおく」という選択肢を持つことです。医療の現場では1回の話し合いで結論を出さないといけないという、暗黙の了解が自分の中にはありました。それを根底から覆してくれました。なんか、心が救われた気がしました(笑)。時間が解決してくれる問題もたくさんありまもんね。

 2つ目は戦略的ニヒリズムという言葉を思い出して意思決定支援の話し合いを始めることです。“間違っても他者である患者さんのことを全部知ることができるなどと思わずに、しかし、できる限りその患者さんのことを知るという行動は続ける”。この本には哲学的な部分も多いです。あくまで患者さんは他人です。自分は相手のことをわかった「つもり」になる傾向があるのでこの態度はかなり重要だと思いました。

 そして、話し合いで相手や自分の価値観を意識することです。これが「納得感」を形成する上で最も重要です。本文中に「価値観コミュニケーション」という内容がありますが、できればこの通りにやりたいなと思います。ただ1回じゃ難しいと思うので、その都度読み返してレベルアップしていきたいと思います。

 

 最後に、これからの日本は他死社会へ突入していきます。(もう始まっていますね。)その中で、医療はより高度になり選択肢もたくさん出てきます。その反面今度はその選択肢を選ぶのが難しいという状況になっていきます。その中で1人1人が「納得」して、自分らしい生き方をできる。そんな世の中になっていけば嬉しいなと思います。それが実践できる医師になれるよう努力していこうと思います。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。